健康診断で「異常」「要精密検査」と指摘されたら
健康診断の結果をしっかりフォローして、その後の健康や生活の質向上につなげていきましょう。
健康診断の結果全般について
健康診断の結果はどう判断したらいいですか?
健康診断では、「異常なし」、「要経過観察」、「要精密検査」、「要治療」などと判断されます。それぞれの意味を知って、的確な対応を行ってください。
異常なし
検査結果が正常範囲内だったことを表しますので、特に心配する必要はありません。
要経過観察・要再検査
正常範囲ではないので、数ヶ月~1年後に再検査を受ける必要はありますが、緊急性はない状態です。生活習慣などの改善を心がけることで、正常範囲内に戻すことや、悪化を防いでいきましょう。当院ではその方に合わせたアドバイスや無理のない範囲での改善方法などについて詳しくお伝えしておりますので、お気軽にご相談ください。
要精密検査
さらに詳しく検査する必要がありますが、精密検査の結果、異常がないという可能性もある状態です。精密検査では、健康診断だけでは特定できない病気についてしっかり調べることができます。「要精密検査」と言われたら、必ず受診してください。
要治療
すでに治療が必要な異常値が見つかったという状態です。すぐに専門医を受診して、的確な診断を受け、最適な治療についてしっかり相談してください。
異常などが指摘された場合について
血圧を自宅で計測すると120/70程度ですが、健康診断で高血圧を指摘されました。
健康診断やクリニックで受ける血圧測定では、緊張して血圧が高めに出てしまうことがよくあります。血圧は食事や運動によって大きく変化しますし、心理状態によっても変わってしまいます。そのため、1回の血圧測定が基準値より高いから高血圧症と診断することはありません。ただし、高血圧症は全身の血管の動脈硬化につながりますし、脳出血・脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な疾患の原因にもなってしまいます。そのため、健康診断で高血圧を指摘されたらその結果と、ご自宅でリラックスして何度か計測した血圧の結果を持って受診することをおすすめしています。
糖尿病の疑いがあると指摘されました。合併症が怖いと聞いていて不安です。
糖尿病では血液中のブドウ糖である血糖が慢性的に高くなることで血管に負担をかけ続け、動脈硬化を引き起こし、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを上昇させます。さらに、高血糖の状態が続くと全身の毛細血管にも重大な障害を起こし、失明や足指の壊死、透析治療が必要になる腎機能障害などの合併症につながってしまう可能性もあります。こうした重大な合併症を起こさないためにも、自覚症状のない初期の段階で的確な治療をはじめることが重要です。
血糖は膵臓という臓器から分泌されるインスリンというホルモンで調節されていますが、インスリンの不足や、働きが不十分になるなどが起こると血糖値が上がります。放置してしまうと生命や生活の質を脅かす危険性があるため、糖尿病の疑いを指摘されたら、血糖が上がった原因を見極め、それに適した治療を受けてください。
コレステロールが高いと指摘されたのですが、なにも症状がないので受診にためらいがあります。
コレステロールには善玉と悪玉があり、悪玉のLDLコレステロールと中性脂肪が動脈硬化を引き起こします。一方、善玉のHDLコレステロールは動脈硬化を防ぐ役割を持っています。悪玉コレステロールが増えると動脈硬化を引き起こしますが、動脈硬化には自覚症状がほとんどありません。自覚症状が現れてからでは脳出血・脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な疾患のリスクが高くなりすぎてしまうため、自覚症状が全くなくても異常を指摘されたらできるだけ早く治療を受けてください。
診療では、LDLコレステロールと中性脂肪の数値だけでなく、高血圧や糖尿病など他の生活習慣病の有無や状態、受動喫煙を含む喫煙、慢性腎臓病や早発性冠動脈疾患の家族歴、動脈硬化性疾患の既往、年齢、性別などを考慮した上で診断し、最適な治療方針を立てていきます。
尿酸が高いと指摘されました。ビールを控えたら大丈夫ですか?
尿酸は血液中に含まれており、増えてしまうと関節の中で結晶になってしまいます。足の親指などに結晶ができて激しい痛みを起こす「痛風発作」を起こす場合がありますし、腎不全の原因になる可能性もあるため尿酸値コントロールの治療を受けてください。尿酸値が高い場合、他の生活習慣病を合併する割合が高いので動脈硬化の予防も重要になってきます。
尿酸はプリン体という原料から作られますので、プリン体を多く含んだ食品や飲料を控える必要があり、食事の総カロリー量もしっかり見直してコントロールしていきます。軽い散歩などの運動やたっぷりの水分補給も重要です。
なお、ビールは確かにプリン体が多く含まれますが、他のアルコールも尿酸を作る原料になります。そのため、単にビールを避けるだけでなく、アルコール自体を控えることを心がけてください。
肝機能障害を指摘されました。どんな原因が考えられますか?
アルコールの過剰摂取と肥満による脂肪肝を筆頭に、薬剤性、ウイルス性(B型、C型)肝炎などが考えられますが、診断には専門的な検査が必要です。
肝臓ではたんぱく質の合成、糖分や脂肪の貯蔵、胆汁の生成、有害な物質の分解や解毒などが行われています。一般的な健康診断では、肝臓の細胞中に存在するタンパク質であるAST(GOT)、 ALT(GPT)、 γ-GTPなどがどのくらい血液に含まれるかを調べる肝機能検査をしています。正常な状態ではこうしたタンパク質は血液中にわずかしか存在しません。ただし、肝細胞がさまざまな原因によって壊れてしまうとこうしたタンパク質が流出するので血液中の数値が上がります。脂肪肝の場合には、生活習慣の改善が必須ですし、他にも厳重な経過観察を要する病気の可能性もあるため、早めにご相談ください。
貧血で内視鏡検査をすすめられ、戸惑っています。
貧血は血液中のヘモグロビンが不足している状態です。ヘモグロビンは、全身に酸素を運ぶ赤血球に含まれており、貧血が起こる原因には、鉄分不足と慢性的な出血などがあります。
女性の場合、生理による慢性的な出血と鉄分不足によって貧血が見られるケースがよくあります。若い女性の場合、ダイエットや偏食なども貧血リスクを上げる原因になっています。
40歳以上の年齢では、胃潰瘍・胃がんや大腸がん、婦人科系の病気などによる慢性的な出血があって貧血が起こっている可能性が高くなります。こうした病気で貧血の症状が出ている場合にはできるだけ早く的確な治療を受ける必要があるため、貧血を指摘された場合には、速やかに受診してください。
尿検査で「異常あり」と指摘されました。どんな検査が必要ですか?
尿検査では血尿の有無、体に必要な糖やタンパクの量などを調べています。ただし、結果は前日や当日の状態などに左右されるため、精密な検査を行わなければ診断はできません。そのため、「異常あり」と指摘されたら一般的な健康診断では行わない腹部超音波検査などで治療が必要な病気があるかどうかを調べます。可能性のある病気としては、尿路感染症、尿路結石、腎機能障害、腎炎、糖尿病、腫瘍などが考えられます。
心電図検査で異常ありと指摘されました。心臓に異常があると思うと不安です。
心臓は筋肉が収縮するごとに微量の活動電流が流れるため、心電図検査では心臓の動きを調べるためにその変化を記録します。心電図検査で異常ありとされた場合には、脈の異常による不整脈、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、心筋症や心肥大など心臓自体の異常などの可能性があります。こうした疾患の場合、すぐに治療が必要なケースから経過観察で当面は治療の必要がないケースもありますので、必ず精密検査を受けてください。特に、胸の痛みや息切れなどの症状があるようでしたら、できるだけ早く受診しましょう。
循環器科では、通常の生活を行っていただきながら24時間の心電図を記録できるホルター心電図検査、走るなど負荷をかけた時の状態を調べる負荷心電図、心臓の動きを確認できる超音波検査などを行います。また、必要があれば心臓の血管の詰まり具合をみる心臓カテーテル検査や冠動脈CT検査を行って心臓の状態を詳細に調べて的確に診断しています。
メタボリックシンドロームは病気ですか?
内臓脂肪が過剰に蓄積して、高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)といった生活習慣病をいくつか合併している状態がメタボリックシンドロームです。
診断では、腹囲「男性85cm、女性90cm以上」であること、さらに血圧「130/85mmHg以上」、中性脂肪「150mg/dL以上またはHDLc40mg/dL未満」、血糖「110mg/dL以上」が2項目以上当てはまると診断されます。
生活習慣病は血管に大きな負担をかけ続ける病気です。そのため、メタボリックシンドロームの状態が続くと全身の血管に負担がかかり続けて動脈硬化が進行します。その結果、脳梗塞や心筋梗塞を発症するリスクが高まります。
それぞれの病気が単独では治療の必要がない軽度の場合でも、メタボリックシンドロームでは複数の生活習慣病が合併して起こっているため早めの治療が必要になるケースがよくあります。当院では、内科だけでなく循環器科の専門医も連携して治療を行っているため、メタボリックシンドロームを指摘されたらお気軽にご相談ください。
腫瘍マーカーを定期的に受けた方がいいでしょうか?
血液検査による腫瘍マーカーは、がんを早期発見するためのものではなく、進行がんに対する抗がん剤治療後の効果測定やがん再発の目安に用いられるものです。最近になって精度の高いがんの血液検査がニュースなどで報道されていますが、これはまだ実用化されていません。現在の腫瘍マーカーの中で早期発見に役立つものは前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAのみであり、当院ではこれ以外の腫瘍マーカーを健康診断や人間ドックにオプションで組み込むことをおすすめしていません。
腫瘍マーカーは、がんによって血液や尿中の蛋白や酵素などが急激に増えているかどうかを調べています。そのためがんが進行して大きくなれば量が増えますが、腫瘍マーカーが関与する臓器はさまざまですから、精度の高い診断のためには必要な検査がどうしても多くなってしまいます。
さらに、がんの早期ではほとんど変化がありませんが、逆にがん以外の原因で数値が上がる場合がよくあり、さまざまな精密検査を受けたあげくに異常が見付からないことも珍しくありません。こうした場合、「もしかしたら見逃した部分にがんがあるのでは」と不安に思われる方も多いのです。
オプションの腫瘍マーカーを追加するのであれば、リスクが高いと思われる部分の精密検査を追加する方が効果的ですし、的確な診断に役立ちます。当院では専門医による苦痛のない内視鏡検査や精度の高い超音波検査なども行っており、お一人おひとりに合わせたオプションのご相談も受けております、お気軽にご相談ください。